回顧
本当のあなたを知りたいと、いつから思っていただろう?
あなたは優しくて穏やかで、誰もが好いていた。
人は見た目だけが人じゃない!と心の中で何度思っただろう。
そんなあなたをどこかで羨ましく思ってたし、憧れの対象として、一目置いていた。
本当のあなたを見つけるまでは―――...
◆
「もうこんな時期なんだ」
思わず呟いた言葉はあまりにも虚しく響いた、―――式場。
式場といっても色々あるけれど・・・
「沙良っ!」
後ろから聞こえた高い声に、反射的に体をクルリと向ける。
「久しぶり。優菜」
愛くるしい笑顔を振り撒く彼女はもうすぐ結婚式が控えている。
「もう三回忌なんだね」
式場、それはお葬式だ。
「早いね」
うん、と相槌をうつと、優菜の顔が一気に曇る。
「やっぱり、あたしたち間違えだったんじゃないかってずっと思うの。あんなことにならなきゃ、死ななかったのにって」
「...優菜。それは違う「あたし、今も結婚悩んでるの」
話を遮ってきた言葉に思わずフリーズした。
「―――えっ?なに言ってるの?大輔くんは関係ないって本人も言ってたでしょ?」
「でも、関係はあるでしょ。"はるか"の好きな人なんだから。今も」
正論に言葉が詰まる。
真剣なまなざしをして話す優菜に、止める術を知らない。
沈黙がはしった。
「"かずや"くんも来てるんだ」
憎しみが込められている声が聞こえた。
◆
あなたは死んでもこれだけの影響力を皆に与える。
本当のあなたを知りたい―――...
やっぱり、間違えだったのかもしれない。
あの5年前に戻ったら、あたしは今度はどんな方法であなたと出会い、あなたを見つけるだろう。
そして、また本当のあなたを見つけるだろうか。
考えても考えても繰り返されるループに嵌まっていくしかないんだ。
『これから、神崎"はるか"様の三回忌を始めさせていただきます』