知。
まとまっていない感バリバリです。
亀更新でごめんなさい。
目を開ければ、目の前に兄が居た
ぼんやりとした視界の中、兄だけは鮮明に写る
優しい笑みを浮かべた兄は、「水汲んでくるね」と言って、出て行った
視線を天蓋に映す
大きなベッドの周りには、大好きなお気に入りの人形が所狭しと並んでいた
きっと、にぃ様が置いて行ってくれたのね...だってにぃ様はお優しいもの
暫くぼぅ...としていると、突然兄が入って来た
手は震え、顔は蒼白。でも、その手にはしっかりと水の入ったコップが握られている
何か、あったのだろうか。
「はい、___。水、冷たいから少しずつ飲むんだよ?」
「...にぃ様、ちゃ...んと名前、呼んで下さらないの?」
「え?_...あぁそっか、熱の所為で聞こえにくいんだね。僕の愛しい大事な___。早くお眠り」
聞こえない。
聞こえない。
にぃ様の、わたしを呼ぶ名が聞こえない。
でも、喉が痛んで上手く声に出来ないの。ねぇ、
にぃ様。
どうしてそんなに、苦しそうなの_?
「僕の愛しい、世界中の何よりも大切で、美しく純粋な、僕の、僕だけの___。早く早く、大人になっておくれ」
囁く様に、艶やかな声で耳元に呟かれたそれは、
何にも勝る、呪詛のように聞こえた。
稚草。
おいで稚草。
わたしの腕の中に帰っておいで。
稚草にはわたししか居ないんだ。それと同じ様に、わたしも稚草以外は受け入れない
早くおいで、稚草。
赤い鎖に繋がれて、星に還ってしまう前に、
わたしの元に、帰っておいで。
弾かれる様にして、柔らかい、寝心地の良い何かから背を離す
そこは、あの孤独な部屋だった
目の前には、疲れたのであろうか、先生が安らかな顔をして眠っている
規則的な呼吸に、さっきまで早鐘をうっていた心臓がゆっくりと、落ち着きを取り戻した
「起きたか」
「....先生、寝ていなかったんですか?」
「寝ていたが、気配で起きた。それよりいつまで俺は、”先生”なんだ?」
「だって、名前を知らないんだもの。...双子のお使い様、これでいいのかな?」
おどけて言ってみせれば、馬鹿野郎と言って頭を叩かれた。地味に痛い。
先生...双子のお使い様は、ぐるりと部屋を見渡してから、私に視線を向けた
見透かすような浅紫の瞳がゆらり揺れる。
この人は時々、凄く怖い。
「....言ってなかったっけか。俺の名前はノワールだ。覚えとけ。」
ノワール。
その名前は、まるでパズルのピースがハマったように、自分の中にカチリと嵌った
知らないはずの名前が、何故か温度を持っている
そんな、気がした
「そんな事よりお前、自分の記憶を取り戻さなくていいのかよ」
「多分、ちょっと思い出したよ。さっきまで、変な夢を見ていたんだけれど、きっと、記憶の断片だと思う」
どうだ、という風にちょっとドヤ顔を使用した。
というか寧ろ、お前にとやかく言われる筋合いは無い、という意味で視線を鋭くしてみた。
が、しかし。
「...そうか、ここでの記憶を、な....。」
苦虫を噛み潰したように、眉がぎゅっと寄せられて、切れ長の目もいつも以上に壮絶な冷えを魅せている
不安げに揺れる瞳は、しかしながら私を見つめたまま離さない
この場所に、なにがあるのだろうか
そんな疑問は、以外にもあっけなく解き明かされた
「お前、兄との想い出を取り戻して、恐ろしくはないのか?」
あぁ、そうか。
なんとなく、理解してしまった
この人、本当に助けようとしてくれているんだ
と。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。




