憶。
若干長い、そして文がまとまらない。
みなさんにとって、素晴らしく読み難い作品かもしれません,,,,,。
城に入り洗礼を受けた私は、軽やかな足取りで眩しいぐらい白い、階段を上る
私が昇っている、白い塔は、今ではあまり使われていないという、私がかつて住んでいた場所。
まぁ。もちろん、私1人でここに来れた訳ではない
城の人々があまりにしつこく危険に晒されたらどうする、と言って来たので
それなら、と一番強そうな護衛の人をつけてもらって、やっと許可された。
古塔は未だに美しさが衰える事無く、丁寧に掃除されている為か、蜘蛛の巣1つ見つからなかった
いつだったか、まだあまり汚れていなかった兄と遊んだ場所。
理由は知らないけれど、私たち兄妹は、大人の居ない、この塔で育った
大きな、1つの部屋しかない、こじんまりした所だったけれど、不自由は無かった様に思う
思い浮かべるのは、窓の無い、沢山のロウソクで赤々と輝く部屋
1つの大きな、天蓋のついたベッドはシルクの様に滑らかで、よく兄に怒られながらも羽毛の心地よさに飛び跳ねた
赤い、金糸で飾られた絨毯の上には、色とりどりのクレヨンが散らばり、
部屋の片隅には、忘れられた様に、椅子や、あまり使われていないぬいぐるみ等が固めておいてあった
そして、私の過去には、いつだって傍に、兄が、微笑んで___
...長く過去の想い出に浸っていた所為か、階段を進む足が止まっていた
しかし、
せっかくついて来てくれた護衛の人は、甲冑を着ているせいか、子供用に作られた塔に昇れない
もしかしたら、愛子しか入れないのかもしれないけれど
記憶が断片的にしか無い私には解らない。
彼等がいないおかげで、私が突然立ち止まった所は、誰にも見られずに済んだ。
...とにかく私は、懐かしい場所に来たかっただけなんだ。
長い長い階段の先にみえた、懐かしい、少し色あせた茶色の扉
子供でも簡単に開けられる様に作られたドアノブを回して、部屋に入る
その先にあるのは、私たち兄妹が父神に貰った机などの生活品と、母神にもらった古い玩具
そして、回想にでてきた、あの部屋
の、ハズだったの
に。
「よう、稚草ぁ。」
「...ど、..して?」
何故か、先生が居た。
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窓の無い塔。
ざわめく木々に、黒い鴉の泣き声。
優しい草花が咲き乱れる事の無い、絶望の塔。
所々煉瓦が崩れ落ちている、蔦の絡まった古いその建物は、全身で私たちを包み込んでいた
大人の来ない、子供だけの生活。
衣食住に困る事は無く、遊びに飽く事も無い。
そんな中、兄は素晴らしく優しかった。
「ほら___、見てご覧?とても可愛いだろう?」
「わぁ、可愛い。___にぃ様、こんなに可愛い子、一体いつ頂いたの?」
「あぁ...。_..父神様が、___が寝ている時に来られてね。そんな事より、名前は何にする?」
「ええっとねー.....」
笑い合う兄妹。でも、そこにはいつも、どこか悲しみが混ざっている
何かから妹をかばう様にしている兄。
傷ついた兄を慰める様に寄り添う妹。
あれは、一体誰だっただろうか....。
「それはお前の記憶だ。」
はっとして周りを見渡すと、先生と目が合った
先生は、鋭い眼光を放ちながら、あちらの時は隠していたのであろう、浅紫の髪を揺らしている
風のない部屋で、何故揺れているのかは解らない。
何よりも、何故私の記憶だと断言出来るのかが解らない。
そして、どうして私が今見た映像を知っているのかが解らない。
彼は一体なんなのだろう。
そして私は、あの記憶は、兄は、なんなんだろう。
愛子って、何なの?
「稚草、お前は歴代の愛子の中で、最も純粋で美しく、力に溢れている。」
___先生、何?何を言っているの?
「だが、その代償に、他の者なら誰でも持っているものを、奪われなければならなかった」
___先生はまた、私に難しい問題を解かせようとするの?
「お前は幸せだ。だが、同時にこの世のどんな者よりも不幸だ。」
___まだここに来たばかりなのに、私は幸せ?そして、誰よりも不幸?
「_...今は未だ、解らないかもしれない。だが、いずれ識る時が来る。」
___いずれって、いつ?いつまでが、未だ、なの?
「その時までに、俺はお前を救おうと思う。」
___救う?私をアナタが?
「だから、俺を拒否しないでくれ。」
「私を救えるのは、にぃ様だけよ。他人なんて要らない。私はにぃ様だけでいい」
口から零れた、意図しない声。
感情と心と躯がバラバラになった感覚が、私を襲う
不思議な浮遊感、傷む心、それなのに私の感情は驚く程嬉しさで満たされている
これはナニ?
この思いは、なンナの?
虚ろう瞳が捕らえたのは、困惑気味の先生と、
鏡に映る、知らない誰か。
私は、一瞬かいま見た、優しい兄の笑顔に引きずられる様にして、
その場に倒れこんだ。
優しいあの瞳は、一体、誰を映していたのだろう...。
いつだって誤摩化されて生きて来た
それが代償だったなら、どれだけ私は幸せだっただろう
彼が私を守ってくれていたから、私はここに存在できる
どうして彼だけが、罪の檻に捕われているのだろう
どうして私は、ここに居るのだろう
私の問答は、
果てしなく広がる白に、吸い込まれて行く
ただ、それだけ。