夢うつつ
ごちゃごちゃ。
赤いものが目の前を染める
視界の端に映る、銀の甲冑
助けて、私を。
大いなる代償を省みなかった私の、報い
「何をやっている。」
『チッ、もう来やがったか、この外道共が!!!!』
「その方に手出しをする事は、私達が許しませんよ」
「神妙にお縄を頂戴しろ」
流れたのは、誰かの尊い命の水。
「いやあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」
狂った様に泣き叫ぶ私を、誰かが諌めてくれただろう
____..1つ、
慰めてくれた誰かに、私は怒鳴り散らしただろう
____..1つ、
力で私を説き伏せようとした誰かに、力一杯爪を立てただろう
____..また、1つ。
罪が重なって、重なって、怖くて、消えたいのに、それが叶わない
嘲る様に、猫が笑う
『なんだ、君はまだ白いままか』、と。
私は問う。
「白いとは何。無知なる者が白いのか、力なき嘆く者が白いのか、それとも罪の中に生きる事が白いのか。」
私は死にたかった
支え無くしては生きながらえる事さえも叶わない、この身の脆さと醜さを嘆いて、消えたかった
双子は願いを叶えてくれる。
それに縋ろうとした事も、また罪深い事なのだろう
「私が白なら、世界の人々はどれだけ綺麗な心を持っているんだろうね。」
笑いながら、私は微睡みに堕ちた
という。
夢うつつ
目覚めると、そこは学校の教室だった
いつも自分を起こしてくれる女子が、「あれ、珍しく起きたね」と笑いかける
安心した瞬間、不安定だった椅子が、重力に逆らえずに降下し始める
あ、ということすら出来ずに、私は盛大に転けた
「...また、お前か」
「す、すいません.....。」
「すいませんでした、で済むなら警察要らねぇんだよ頭つかえやハゲぇ。ていうかお前宿題出せや一ヶ月前の課題とレポート、プリントも10枚程度否それ以上にたまってたんじゃねえのかぁあん?脳味噌つまってんだろうがよぉ言われた事は最低限守れやこの家畜以外の無産階級がよお!」
「申し訳ございません黒井先生」
鼻を鳴らして黒板に向かう先生。あれ、ここでも口悪くって良いのか?
いやもともと愚痴愚痴ねちこく言ってたけど、口調が...まいっか
席に着くと、隣の男子が笑いをこらえていた。なんだコイツ
そんなこんなで、平和に一日を終える
「黒井せんせー」
「あ?」
「....先生って、お使いなんですよね?」
「はぁ?夢の続きは家に帰って寝てから言えや」
「.......そっか」
そっか、と言った私に流石に言い過ぎたと思ったのか、先生は気ぃつけて帰れよ
と言ってくれた
そっか。
あれは、夢だったんだ........。
安心したのもつかの間
帰り道には、何故か見覚えのある美女2人
「稚草様、帰って来て下さいまし」
「私達が長くここに居れば、稚草様の精神は今以上に危うくなります」
「.....なんでここに居るの?」
「ここは、アナタが作り出した世界。」
「アナタは神々の世界で意識を失い、ここに殻を作って閉じこもっています」
「かろうじてアナタは精神崩壊を免れましたが、」
「壊れるのも時間の問題でしょう」
そんなはずない.....ここに居たい
幸せでありたい
怖い事の無い、生ぬるい羊水の中に浸っていたい
「稚草様の所為で、神々の世界は混乱に陥っています」
ビクッ
予期しない言葉に肩が跳ねる
「稚草様がいらっしゃいませんと、あの世界の魔法の均衡は崩れたままです」
「稚草様、どうかお戻りになって」
「記憶を、取り戻さねばならぬのでしょう」
「嫌だ!!あの恐い思いを体験しろと言うの!?私はただ、平凡でも良いから、幸せに生きたかっただけなのに」
「自分勝手すぎるよ、稚草様は」
リューイが、冷たく言い放った言葉が刺さる
視線も、避難の目も降り注ぐ
恐
イ
「いつも、誰かの幸せを願うフリをして、自分は助かりたいと思っている」
やめて.....
「アナタは幸せになれない。だってアナタが誰かを幸せにできないから」
「やめて」
汗だくで、へばりついた髪をそっと耳にかける
目の前には、あの忌々しい猫が居る
沢山の見知らぬ女官、神官、騎士、王族貴族に女神たち
息をのんだ
「お帰りなさいませ、」
「よく、無事に帰って来て下さいました.....」
「一時はどうなる事かと思いましたが、支障は無いようで何より」
あぁ、また帰って来てしまった
微睡みから抜け出した私には、ここは凍てつく氷のようだ
ただ、
その氷の中で、優しい炎が揺らめいている事に気付く事は
できた
そんな気がする
眠りの鎖にいざなわれ 時が回り始める
悲しみの鐘が鳴り響く夜 更なる罪が、罪人に降り掛かる
彼の人はツミビトなり。
漣は謳う
彼の者の復活は近い