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海の奥には  作者: uru
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秘密の家

目が覚めた。1番最初に耳に入ってきた音は海のさざなみの音だった。大きく伸びをし、最初はなれなかったリビングへの廊下を歩き、ドアを開ける。

リビングにはだれもおらず、海と朝日が輝きあい、ゆらゆらと床に模様を作っていた。なんて美しい景色だろう、学校の教科書と睨めっこするよりもこちらの景色を眺めているほうがずっと人生を有意義に生きられる気がするのだ。

机には月子さんの置き手紙が置いてあった。どうやら近所に出かけたらしい。もう半年近く一緒に住んでいるというのにわたしは、彼女の仕事もなにをしているのかもしらない。

冷蔵庫を開け、ガラスのティーポットの中に入っている水と一枚のパンをとる。

ここの生活はの家事は当番制で1週間だれが何をするのかが決まっていた。

最初に来た時はパンを焦がしてしまうほど何もできなかったのに、慣れと習慣が1番何かを上達させることができるな。とバターを塗りながら考え深げに思っていると、突然、インターホンが鳴った。誰だろうか。こんな日曜日の朝に。なんとなく、嫌な予感がする。食べかけのパンをそっとおき、そんな音が家の外に聞こえるわけはないのだが、そろりとドアを閉めゆっくり、音を立てず廊下を歩きインターホンの画面を見る。先生だ。なぜ、ここがわかった。

出ようか、でまいか、しかし、なぜここがわかったのかも気になるのは事実ではあるし、学校の先生が来た時は必ず出るように月子さんに厳しく言われていた。神経質にドアのノブに手を掛け、ゆっくりと開ける。できればその間に車でもなんでも乗って帰っていって欲しかったのだがわたしの期待を裏切って、現実は逃げないということを証明するかのようにはっきりとそこに先生がいた。名前はなんだったか、もう長い間学校に通っていなかったので忘れかけていた。そうだ、なんといったか、あれだ、佐原といったか、佐原先生だ。わたしが口を開ける前に先生が元気よく押し付けるように山のようなプリントを顔に押し付けてきた。近づきすぎて読めないプリントの文字をどぎまぎしながら眺めていると、「久しぶりだなあ」とこの朝から暑い猛暑の日にどうやったそんな声が出せるのかというような良く言えばはっきり、ハキハキとした声。悪く言えば暑苦しい声でこの佐原という先生は、第一声を発した。

「お久しぶりです、先生。」と答える自分の声があまりにも弱々しくか細くて話しているこちらが驚いた。

「相変わらず声が小せえなあ、お前は。全然学校来ないからよ、クラスの大半がお前の名前、忘れかけちまって。」ははは、と沸いた声をあげて思いっきり両端の口角を引き上げる。そりゃそうだ、わたしは、もう春から学校に来ていない。転校してきたクラスの人はわたしの存在すらまずまず知らないだろう。

「でもよ、お前のこと知ってるクラスの奴らがさ、学校来いって寄せ書き書いてくれて、幸せもんだなあお前も。」と、良く焼けた腕にドンッと背中を叩かれる。この昭和チックな人に保護者側から苦情が来ないのも、ここが東京から何時間も掛けないと辿り着けない小さな島だからだ。狭い島がすべでの私達はこの島の普通がその外では通じないことに違和感を覚えない。井の中の蛙、というものだろうかと熱くてぼんやりとした頭で月子さんから教えてもらったことわざを思い出す。そんなことを思い出している間に佐原先生がなにかいっている、学校では将来に役立つことがどうとかこうとか、協調性と積極性がどうとかこうとか、やっと話が終わった時わたしの額には汗がじわりと垂れていた。最後は自分だけ話して自己満足したのか「来週から来てみろよ」と叫んで車の扉をバタンと閉めた。車のエジソンの音が遠ざかって姿が見えなくなった瞬間扉を思いっきり開け中に駆け込む。さっきから聞いていれば学校がどれだけ素晴らしいか語ってまるで崇拝者だ。学校に毎日行くのがまるで当たり前みたいにわたしを学校に行かせようとする。


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