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1 おかえりの匂い
夕焼けが 屋根の上に
あんず色の ふとんを干している
とおくで だれかが
「ごはんですよー」と よんでいる
その声は 風にのって
ぼくの 耳を くすぐっていく
路地の まがりかど
どこかの お家の 晩ごはん
おしょうゆの こげた匂い
おだしの あまい ゆげの声
ぼくは 急に さびしくなって
わざと 大きな足音をたてて かけていく
お帰りなさいと いうときの
お母さんの エプロンの しわ
あれは 魔法の 地図みたいだ
かなしいことも わすれちゃう
ひざを すりむいたのも なおっちゃう
きょうの 夕焼けは
なんだか お母さんの においがする
あったかくて
ちょっとだけ なみだが出る




