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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第25章

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92/215

利害の一致

「……葵。俺たち、そろそろ籍、入れないか」


俊介の声は震えていた。

強がっているのに、どこか必死だった。


葵は驚かなかった。

むしろ——

待っていた言葉だった。


「……うん。いいよ」


その返事に、俊介は大きく息を吐いた。

葵の手を握る指先が、少し強い。


(これで……離れないよな)


俊介の胸の奥で、焦りがようやく静まる。


(これで……揺れは止まるはず)


葵の胸の奥で、理性がかろうじて形を保つ。


二人の思惑は違う。

けれど、

“今はこれでいい”という一点だけが

静かに一致していた。


その静かな合意の裏で、

葵の心の奥にある小さな波だけが、

まだ消えずに揺れていた。

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