前へ目次 次へ 88/215 見つけてはいけない笑顔 大和の笑顔が、 頭から離れない。 “見つけてはいけないもの”だったはずなのに。 10年前。 彼の奥さんが闘病していた最中に抱いた感情。 許されないと分かっていた。 進んではいけない気持ちだった。 だから距離を置いた。 忘れたかった。 なのに—— アルゴリズムの偶然が、 閉じ込めていた記憶の箱を 勝手に開けてしまった。 (どうして、今なんだろう) 胸の奥がじんわり熱くなる。 痛みとも、懐かしさともつかない感情が、 静かに、確かに、動き始めていた。