86/474
少しずつ近づく
その頃、北海道。
大和は店の片付けを終え、
結衣と他愛ない会話をしていた。
「今日のリール、バズってましたよ」
「へぇ、そうなんだ」
大和は笑ったが、
特に興味はなかった。
自分が映っていることも、
その動画が
遠く離れた誰かの心を揺らしたことも
知らないままだった。
(……美咲)
ふと、胸の奥が痛む。
結衣の優しさは心地よい。
でも、
その奥にある“空白”は
10年経っても埋まらなかった。
そしてその空白の形が、
誰のものなのか——
大和はまだ気づかないふりをしていた。




