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静かな別れ
病室の灯りは薄く、
機械の規則的な音だけが響いていた。
葵は母の手を握り、
その温度を確かめるように
そっと指を絡めた。
「……お母さん」
呼びかけても、
返事はない。
それでも、
母の胸はゆっくり上下していた。
看護師が静かに入ってきて、
モニターを確認する。
「……ご家族の方、
おそばにいてあげてください」
その言葉で、
葵はすべてを悟った。
俊介が隣に座り、
そっと肩に手を置く。
「葵……」
涙が頬を伝う。
止めようとしても止まらない。
「ありがとう……
今まで……本当に……」
母の呼吸は、
少しずつ、少しずつ、
浅くなっていく。
最後のひと息が
静かに空気へ溶けた瞬間——
葵は母の手を胸に抱きしめ、
声を殺して泣いた。
俊介は何も言わず、
ただその背中を支え続けた。
病室の時計の針だけが、
淡々と時を刻んでいた。




