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葵の空白
母を見送ってから数週間。
葵の時間は、どこか薄い膜に包まれたように
静かに、ゆっくり流れていた。
俊介は優しかった。
必要以上に寄り添おうとせず、
でも離れもしない。
(……ありがたいな)
そう思うのに、
胸の奥の空白は埋まらなかった。
仕事に戻っても、
家に帰っても、
ふとした瞬間に母の声を探してしまう。
夜、ベッドに横になっても眠れず、
スマホをぼんやり眺める時間が増えた。
(こんな時に……何してるんだろ、私)
自分を責める気持ちと、
何かを求める気持ちが
静かにせめぎ合っていた。




