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気付いてはいけない想い
美咲と結婚していた頃。
大和は“ある感情”に気づきかけていた。
でも、
その感情に名前をつけることは
絶対に許されなかった。
(俺は結婚していた。
そもそも11歳も下の女の子だぞ)
だから、
気づかないふりをした。
正しかった。
そうするしかなかった。
でも——
正しさだけでは
どうにもならない想いが
確かに胸に残っていた。
美咲を愛していた。
それは嘘じゃない。
けれど、
胸の奥の“別の場所”に
葵の影がずっと残っていたことも
また事実だった。
大和はその影を
10年以上
ずっと見ないふりをしてきた。




