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止まった時間のなかで
閉店後の厨房は、
機械の音も止まり、
静寂だけが残っていた。
大和は流し台に手をつき、
深く息を吐く。
結衣が置いていったコーヒーの香りが
まだ空気に残っていた。
心地よい。
でも、それ以上にはならない。
(……まだ、前には進めない)
美咲がいなくなってから、
時間が止まったままの場所がある。
その奥に、
ずっと気づかないふりをしてきた
“誰か”の影があった。
触れたら壊れてしまいそうで、
ずっと見ないふりをしてきた影。
大和は目を閉じ、
その影をそっと胸の奥に押し戻した。




