前へ目次 次へ 68/204 すれ違う温度 その夜、大和は結衣を家の前まで送った。 雪が静かに降り続け、街灯の光が白く滲んでいた。 「今日は……楽しかったです」 結衣は少し照れたように笑った。 その笑顔に、大和の胸がまた揺れた。 (俺は……前に進んでいいのか) 結衣の温度は心地よい。 けれどその温かさは、 記憶を薄めてしまいそうで怖かった。 一方その頃、葵は病室で母の手を握りしめ、 俊介は廊下でひとり、自分の無力さに拳を握っていた。 皆の温度は、 それぞれ違う方向へ向かっていた。