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俊介の限界
俊介は、廊下でうずくまる葵を見つけた。
肩は震え、目は真っ赤で、握りしめたカルテがくしゃくしゃになっている。
「葵……」
声をかけると、葵は顔を上げた。
その表情は、今にも崩れ落ちそうだった。
「どうしたらいいのか……分からないの……」
俊介はそっと葵を抱き寄せた。
その体は軽く、頼りなく、今にも消えてしまいそうだった。
(俺じゃ……足りないんだろうな)
ずっと分かっていた。
葵の心の奥には、まだ大和がいる。
その影は消えていない。
それでも支えたかった。
守りたかった。
でも、限界は近づいていた。
葵の痛みを受け止めるたび、俊介自身の心が削れていく。
(それでも……離れられない)
葵が泣き止むまで、俊介は黙って寄り添い続けた。




