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俊介の沈黙
俊介は、
葵の返事を聞かないまま数日が過ぎた。
(返事を急かすつもりはない。
でも……苦しいな)
葵が大和を忘れられないことは、
ずっと前から分かっていた。
あえて話したことはないから
葵はそのことに気付いてないけど。
それでも、
葵の母を支える彼女を見ていると、
放っておけなかった。
最後に心底葵が笑ったのはいつだ?
はりさけそうな笑顔ばかり思い浮かぶ。
(俺は……ただの代わりなのかもしれない)
そう思うたびに胸が痛む。
家族という形にこだわりはなかった。
でも、守りたい。
葵が笑えるならそれでいい。
俊介はそう自分に言い聞かせた。




