前へ目次 次へ 61/204 葵の限界 病院の廊下で、 葵は壁にもたれたまま深く息を吐いた。 (眠い……でも帰れない) 母の容体は安定しない。 夜中に呼吸が乱れることも増えた。 仕事も休めない。 俊介にも頼りすぎている。 (私……何してるんだろう) ふと、 昔の記憶がよみがえる。 ストーカーから守ってくれた あの夜の大和の背中。 頼もしい横顔。 自分にはない大人の余裕と強さ。 (どうして……今になって思い出すの) 涙が滲んだ。 何年も前のことなのに… 自分でも理由が分からなかった。