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守られる夜
当時、ストーカー事件のニュースが連日流れていた。
「元交際相手に殺害され――」
「つきまとい行為がエスカレートし――」
テレビの音声が、葵の胸を締めつける。
(私も……いつか……)
考えたくない想像がよぎるたび、手が震えた。
翌日。
出勤した葵の顔色は真っ青だった。
「及川さん、ちょっと来て」
大和は事務所に葵を連れていき、
そっと椅子を引いて座らせた。
「昨日、帰り……何かあった?」
その声は驚くほど優しかった。
堪えていた涙が一気に溢れる。
「……ついてきたんです。家まで……インターフォンも……」
大和の表情が変わった。
穏やかさの奥に、鋭い光が宿る。
「今日から、帰りは俺が送る」
「で、でも……」
「いいから。怖かっただろ」
その一言で、葵はまた泣いた。
大和はそっとハンカチを差し出す。
その夜。
大和は葵の横を歩き、周囲を警戒しながら駅まで送った。
「大丈夫。俺がいるから」
その言葉は、葵の心に深く刻まれた。
――この人を好きになってはいけない。
――でも、この人じゃなきゃダメだ。
その矛盾が、葵の胸を苦しくさせた。




