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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第16章

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揺れる気持ち①

俊介の言葉が、

夜の静けさの中にゆっくりと落ちていった。


「……結婚しよう」


葵は息を呑んだまま、

何も言えなかった。


胸の奥が、

ぎゅっと締めつけられる。


(どうして……

どうして今、そんなこと言うの)


俊介の手は温かい。

その温度に触れるたび、

葵は自分がどれだけ彼に支えられてきたか思い知らされる。


でも——


(私……俊介のこと、ちゃんと見れてない)


母のこと。

仕事のこと。

そして……

心の奥に沈んだままの、大和の影。


全部が絡まって、

答えなんて出せるはずがなかった。


「……俊介……」


名前を呼ぶだけで精一杯だった。


俊介は優しく微笑んだ。

その笑顔が、逆に苦しかった。


(こんなに優しい人を……

私は、利用してるだけじゃないの)


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