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消えない影
病院の帰り道。
葵はふと立ち止まった。
「……俊介、私ね。
最近、夢を見るの」
「夢?」
「昔のこと。
……大切だった人のこと」
俊介の胸が、
静かに痛んだ。
その“誰か”が誰なのか、
聞かなくても分かっていた。
大和。
葵がずっと心の奥にしまってきた名前。
俊介は深く息を吸い、
優しく微笑んだ。
「……そうか。
辛いときって、昔のこと思い出すよな」
葵は驚いたように俊介を見た。
責められると思っていたのだろう。
でも俊介は責めなかった。
責められるはずがなかった。
(だって……葵は、ずっとあの人を忘れられなかったんだ)
それでもいい。
それでも、守りたい。
俊介はそう思っていた。




