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灯りのなかで
店に入ると、温かい空気と出汁の香りが迎えてくれた。
女性は湯気の立つ味噌汁を両手で包み込み、ゆっくりと息を吐いた。
「……生き返る」
その言葉に、大和は少しだけ笑った。
吹雪の音が遠くに聞こえる店内は、
外の世界と切り離されたように静かだった。
「無理して歩かないほうがいいですよ」
「……そうですね。ありがとうございます」
女性はしばらく黙って味噌汁を飲み、
やがて顔を上げた。
「私……結衣っていいます」
その名前は、雪の夜に静かに落ちていくようだった。
大和は名乗り返しながら、
自分の胸の奥にわずかな温度が戻っていくのを感じた。
それは恋でも期待でもない。
ただ、長い冬の中でふと見つけた、小さな灯りのようなものだった。
この出会いが、彼の20年の空白を埋める最初の一歩になることを、大和はまだ知らない。




