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すこしずつ失われていくもの
夏が終わり、秋の風が吹き始めた頃。
美咲の体調は目に見えて変わり始めていた。
朝は起き上がるまでに時間がかかり、
食事の量も減ってしまった。
あれほど明るかった笑顔も少しずつ薄れていく。
それでも美咲は、いつも通りを装おうとした。
「大和さん、今日もお仕事頑張ってね」
声は明るいのに、指先はかすかに震えていた。
その震えに気づきながらも、
大和は気づかないふりをした。
気づいてしまえば、
美咲がもっと自分を責めてしまうと分かっていたから。
彼女の強がりを守るように、そっと目をそらした。




