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灯りが刺さる
居酒屋「灯」
その文字を見た瞬間、
15年前の空気が一気に蘇った。
自分が働いていた場所。
店長と出会った場所。
皆が「大和さん」と呼んでいた、あの頃の記憶。
そこに今、店長が立っている。
結衣から追い打ちのDMが届く。
『あれ?葵さんが昔働いてた場所でしたっけ?』
無邪気な一言が、
どうしようもなく胸に刺さった。
返事が打てない。
スマホを握る手が震える。
(……大和さん)
心の奥で、封じていた呼び方が漏れた。
見られないリール。
だからこそ、想像が暴走する。
店長はどんな顔で、
どんな声で、
どんな気持ちで、
あの灯に立ったんだろう。




