272/290
結衣からのDM
仕事を終えて家に戻ると、スマホが震えた。
画面には「結衣」の名前。
胸の奥が、わずかにざわつく。
開くのをためらった。
ずっと続く揺れが、まだ身体のどこかに残っている。
でも、結衣の優しさを知っているから、そっと画面をスワイプした。
最初は他愛ない話だった。
店のこと、常連さんのこと、今日の天気。
その軽さに、葵の心が少しだけ緩む。
その瞬間だった。
『そういえば!店長、リール撮ってましたよ。
いつもと違う場所なんですけど
東京の居酒屋「 灯」 で』
指先が止まった。
呼吸が浅くなる。
(……店長)
胸の奥が、静かに軋んだ。




