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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第77章

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開きかけたフタ

夜。

夕飯を作る気力がなくて、

ソファに沈み込んだまま時間だけが過ぎていく。


スマホを開くと、

大和のリールのサムネが目に入った。

押せない。

でも、押せてしまいそう。


大和は今、どんな声で話してるんだろう。

どんな顔で笑ってるんだろう。


見られないからこそ、

余計に見たくなる。

想像が勝手に膨らんで、胸が苦しい。


「私……どうしたらいいの」


声にならない呟きが、

静かな部屋に落ちた。


深夜、俊介が帰宅し、

いつも通りの声で「ただいま」と言う。

その“普通”が胸に刺さる。


笑って返すけれど、

心はもう別の場所にいる。


フタはまだ開いていない。

でも、もう閉まらない。

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