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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第75章

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触れたら壊れるもの

夜。

俊介は飲み会で不在。


静かすぎるリビングで、

葵はひとり座っていた。


俊介がいなくても、

心は軽くならない。


むしろ、

自分の心の声が大きくなる。


スマホを手に取る。


ホーム画面に、

大和のリールのサムネが見える。


指が震える。


「……見たら、終わる」


押せない。

でも、押してしまいそうな自分が怖い。


涙は出ない。

代わりに、胸の奥が静かに痛む。


触れたら壊れるものを、

自分が抱えていることに気づいてしまった。


葵の世界が、

静かにひび割れ始めていた。

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