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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第75章

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葵の胸の音がきしむ

仕事中、書類をまとめていると、

胸の奥がふっと締めつけられた。


「葵さん、大丈夫?」


同僚の声に、慌てて笑顔を作る。


「うん、ちょっと寝不足で」


本当は違う。

心が、きしんでいる。


そのタイミングでスマホが震えた。


〈今日、会社の飲み会で遅くなる〉


普通のメッセージ。

優しい夫の、なんでもない連絡。


なのに、胸の奥が重く沈む。


「……うん」


返事を打つ指が、わずかに震えた。


俊介がいなくても、

心は自由にならない。


俊介の“正しさ”と“善意の圧”が、

葵の内側に残っている。

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