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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第74章

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情と本心の間で

俊介が寝静まったあと、

葵はひとりでリビングに座っていた。


スマホは触れない。

触れたら、戻れなくなる気がした。


34歳。

リセットするには、現実が重すぎる。


俊介への情もある。

長い時間を積み重ねてきた。

裏切りたくない。


でも、心は別の方向を向いている。


「どうして……私はここにいるんだろう」


涙が、止まらなかった。


葵は知らない。


大和が今日、東京にいたことを。

自分と出会った場所で、

リールを撮っていたことを。


その奇跡が、

葵の胸にはまだ届かない。


葵の心は、限界の一歩手前で静かに震えていた。

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