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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第73章

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近くにいて欲しい存在

夜。

俊介の寝息が一定のリズムで響く。

その音が、今日はやけに重かった。


スマホは胸の前にある。

でも開けない。

開いたら、何かが壊れる気がする。


大和の笑顔が、ふっと脳裏に浮かぶ。


見ていないのに、見える。

あの照れた笑顔。

薬指に触れる癖。

声の温度。


それだけが、今の葵を支えていた。


でも現実は苦しい。

俊介の未来の話は、

自分の未来ではない気がする。


「どうして……私はここにいるんだろう」


涙がひとつ、頬を伝う。


葵は知らない。

大和が今、東京にいることを。

自分と大和が出会った場所でリールを撮っていることを。


知らないまま、胸の奥だけが静かに軋んでいた。


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