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未来へ向かう朝
朝の光が、いつもより少しだけ柔らかく見えた。
大和は荷物を肩にかけながら、玄関の鍵を閉める。
胸の奥が、ほんの少しだけ軽い。
今日は東京へ行く。
美咲のお墓参りでも、過去を整理するためでもない。
自分の未来のために向かう東京。
店に寄ると、結衣がすぐ気づいた。
「店長、なんか最近いい顔してますね」
「そう?」
大和は照れたように笑った。
自分でも分かっていた。
言葉が、表情が、少しだけ軽くなっていることを。
スマホを開くと、深夜の再生は伸びていないまま。
“いいね”も増えていない。
でも、もうその数字に心を引っ張られないようにした。
「まあ、そんな日もあるか」
そう呟いて、スマホをポケットにしまう。
新幹線の窓に映る自分の顔は、どこか明るかった。
未来へ向かう朝。
大和は静かに息を吸い込んだ。




