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東京からの誘い
昼過ぎ、仕込みを終えたタイミングで、
大和のスマホが震えた。
和田さんからのメッセージだった。
『コラボの件で、一度東京にも来れます?
最終調整したいんですよね』
「……東京か」
冬に美咲のお墓参りで来たとき、
久しぶりに居酒屋「灯」に寄った。
店長の和田さんと少し話した。
「あの頃の子、覚えてます?」
そんな軽い会話をした。
電話をかけると、
和田さんは明るい声で言った。
「当時のスタッフの話になってさ。
皆どうしてるんだろうね?」
一瞬だけ、葵の姿が浮かぶ。
でも痛みはない。
ただ、懐かしい。
「元気だといいですね」
大和は静かに答えた。
電話を切ると、
胸の奥に小さな灯がともる。
東京行きが、現実味を帯びてきた。
今度は“過去”ではなく、
自分の未来のために行く東京。
その未来が、
静かに動き始めていた。




