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止まった数字と気付かないふり
店のシャッターを開ける前、
大和はいつものようにスマホを開いた。
数日前に投稿したリール。
深夜帯に伸びていた再生数は——
昨夜は、ひとつも動いていなかった。
“いいね”も付いていない。
「……あれ?」
ほんの少しだけ胸がざわつく。
ここ数日、
深夜にひっそりと増えていた数字。
誰かが、静かな時間に見てくれていた気配。
それが、今日はどこにもない。
昨日投稿した“特別な報告”のリールも、
きっと見られていないんだろうな——
そんな考えがふっと胸を刺す。
自分が“誰かに見てほしかった”ことに、
大和はその瞬間、初めて気づいた。
「まあ……そんな日もあるか」
気づかないふりをして笑う。
でも、薬指に触れた指先が少し震えた。
「店長、今日ちょっと元気ないですね」
結衣が覗き込む。
「そう見える?」
大和は軽く返す。
でも胸の奥では、
“誰かの気配が消えた”静かな喪失感が
じわりと広がっていた。




