249/298
閉ざされる逃げ道
夜。
布団に入っても、眠れない。
俊介の寝息が一定のリズムで響く。
その音が、今日はやけに重く感じた。
スマホを胸の前で握りしめる。
画面は暗いまま。
開けない。
開いたら、何かが壊れる気がする。
大和のリールが頭に浮かぶ。
大和の顔が。
……あの、少し照れた笑顔が。
見たい。
本当は、すぐにでも見たい。
でも、見られない。
俊介が寝返りを打つ。
その気配に身体がびくっと固まる。
昨夜の言葉が蘇る。
——子どもの話。
——未来の話。
——家族の話。
私はそこにいない。
その未来に、自分の姿が浮かばない。
胸が痛い。
呼吸が浅い。
逃げ場がない。
スマホの画面に、
大和のアイコンがふっと浮かぶ。
指が触れそうになる。
でも押せない。
押したら、戻れなくなる気がした。
私はただ、
胸の前でスマホを握りしめたまま、
動けなくなった。
遠くで、大和の世界が開いていく。
その光が、
今の私には眩しすぎた。




