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明るくなる空気
店のシャッターを開ける前、
大和はいつものようにスマホを開いた。
数日前に投稿したリール。
その再生数が、また深夜帯に伸びていた。
「……また、この時間か」
“いいね”ではない。
ただ、再生だけが静かに積み重なっている。
誰かが、
毎晩のように、
同じ時間に見ている。
その“継続の気配”が、
胸の奥にじんわりと広がった。
確認しようとは思わない。
でも、分かってしまいそうで怖い。
分かってしまったら、
何かが変わってしまいそうで。
無意識に薬指に触れる。
その癖に気づいて、
大和は小さく息を吐いた。
「店長、なんか今日、機嫌良いですか?」
結衣が笑いながら覗き込む。
「そう見える?」
大和は軽く返す。
でも声が少しだけ柔らかかった。
深夜の再生。
静かな気配。
毎晩のように続くその“誰か”。
誰かが、自分のリールを見てくれている。
それだけで、
今日の空気が少しだけ明るくなる。
店の鍵を開けると、
冷たい風が頬を撫でた。
今日も仕込みがある。
コラボの準備も進めなきゃいけない。
でも胸の奥には、
言葉にならない温度が残っていた。
その温度が、
大和を静かに前へ押していた。




