表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第68章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

236/284

境界線が破られる

夜。

風呂から上がると、リビングの空気が妙に静かだった。


俊介が、葵のスマホを手にしていた。


その瞬間、

背中に冷たいものが走る。


——触られた。

そう思った。


スマホは今、葵の身体の一部みたいになっている。

唯一の逃げ場で、唯一の呼吸で、唯一の灯り。

それを俊介の手が包んでいる。


気持ち悪い。

吐き気がするほど。


「最近さ……スマホ、ずっと持ってない?」

俊介は画面を見たまま言う。

声は静かで、優しさすら混じっているのに、

その優しさが逆に怖い。


(触らないで。返して。返してよ)


気づいたら、

葵の手が俊介の手からスマホを奪い返していた。


反射的に。

身体を守るみたいに。


俊介が少し驚いた顔をする。

「……そんなに大事?」


その言葉が、胸に刺さる。


大事なんじゃない。

これがないと、呼吸ができない。

これがないと、自分が自分でいられない。


でも言えない。


「……疲れたから寝るね」


逃げるように布団に潜り込むと、

胸の奥で何かがきしんだ。


俊介の手が触れたのは、

スマホじゃなくて、

葵の“境界そのもの”だった。


その境界線が、静かに破られていく音がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ