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俊介の執着と疑い
朝の光がまだ柔らかい中、俊介の声だけが重かった。
「昨日、何見てたの?」
ただの会話のはずなのに、胸の奥がひやりとする。
葵は笑ってごまかす。
「んー、なんでもないよ」
俊介はその笑顔をじっと見つめる。
その目に、昔の“代わりでいい”と言っていた頃の影が混じっているのが分かった。
スマホを見る時間が増えたこと。
夜、ひとりで布団に潜る時間が長くなったこと。
俊介は全部、気づいている。
「ロック、変えた?」
「え……? 変えてないよ」
嘘じゃない。
でも、胸が痛い。
罪悪感が、言葉を細くする。
俊介はため息をつき、視線をそらした。
その横顔に、焦りと苛立ちと、言葉にならない不安が滲んでいる。
(また……誰かを見てるのか?)
言われなくても、伝わってくる。
家の空気が、ゆっくりと沈んでいく。




