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光と影の狭間で
夜。
俊介が帰ってきた。
「最近、スマホばっか見てない?」
その声に、
葵の背筋が一瞬で固まる。
(……見られてた?)
俊介はまだ本気で疑ってはいない。
ただ、機嫌が悪いだけ。
それでも、
胸の奥に冷たい影が落ちた。
葵はスマホをそっと伏せ、
「ごめん」とだけ答えた。
その夜。
布団に入っても眠れず、
なんとなくインスタを開く。
——新しいリールが上がっていた。
店長の声。
湯気。
光。
いつもより少し丁寧な手元。
(……店長)
胸の奥が、
じんわり温かくなる。
結衣も同じタイミングでそのリールを見て、
静かに思う。
(やっぱり、なんだか柔らかい)
でも、結衣は何も言わない。
ただただ見守る。
葵はスマホを胸に抱き、
そっと目を閉じた。
冷たい影の中で、
小さな灯だけが、
静かに揺れていた。




