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大和の気付き
昼の仕込みがひと段落した頃。
大和は手を洗い、ふとスマホを開いた。
通知欄に、見慣れない名前。
「及川葵さんがあなたをフォローしました」
指が止まる。
呼吸も止まる。
「……及川さん?!」
声に出した瞬間、
胸の奥がじんわり熱くなった。
たまたま。
偶然。
そう思おうとするのに、
心臓の鼓動だけが素直じゃない。
画面を閉じても、
落ち着かない。
包丁を握っても、
手元が少しだけぎこちない。
その変化に、
結衣はすぐ気づいた。
(……店長、なんかソワソワしてる)
でも、聞かない。
聞かないほうがいいと分かっているから。
大和は深呼吸をして、
いつものように仕事に戻った。
けれど、
胸の奥のざわめきだけは、
どうしても消えなかった。




