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無意識の虹
ふと、
ベランダの外が明るいことに気づいた。
カーテンを開けると、
雨上がりの空に薄い虹がかかっていた。
「……きれい」
気づけばスマホを構えていた。
写真を撮るなんて、いつぶりだろう。
シャッターを押す瞬間、
スマホを支える左手が画面の端に少しだけ映り込んだ。
でも葵は気づかない。
ただ、虹の美しさに心が軽くなる。
(……たまには、いいよね)
深く考えずに、そのまま投稿した。
虹の写真だけ。
投稿を終えると、
葵はスマホを胸に抱いた。
「……あったかい」
その温かさが何なのか、
自分でもよく分からない。
ただひとつだけ確かだった。
心の奥に、小さな灯がともっていた。




