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押された背中
結衣とのやり取りを終えたあと、
葵はもう一度通知を開いた。
震える指で、
大和のリールをタップする。
画面いっぱいに広がる、
懐かしい手元。
湯気。
包丁の音。
北海道のあのお店の空気。
「実は先日東京に行く機会があって、東京の居酒屋「灯」にも行ってきました……」
その一言で、
葵の目から涙がこぼれた。
(……来てたんだ)
声にならない想いが胸に溢れる。
同じようなタイミングで
北海道の「灯」には葵ー
東京の「灯」には大和ー
実際には2人は会えていないのに
なんだかつながっている感じがした…




