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ため息が漏れる
「リール、撮ります?」
結衣の声に、大和は小さく頷いた。
包丁の音。
立ちのぼる湯気。
カウンターの木目。
カメラの前で、いつものように手を動かす。
「実は先日、東京の居酒屋「灯」にも行ってきまして……」
言いながら、胸の奥がきゅっと痛んだ。
撮影を止めた瞬間、
また深い息が漏れる。
「……はぁ」
結衣は横で静かに見守っていた。
そのため息の意味を、誰よりも理解しながら。
投稿ボタンを押すと、
結衣はそっと目を伏せた。
(葵さん……見てくれるといいな)
声には出さず、心の中だけで願った。




