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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第65章

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ため息が漏れる

「リール、撮ります?」


結衣の声に、大和は小さく頷いた。


包丁の音。

立ちのぼる湯気。

カウンターの木目。


カメラの前で、いつものように手を動かす。


「実は先日、東京の居酒屋「(あかり)」にも行ってきまして……」


言いながら、胸の奥がきゅっと痛んだ。


撮影を止めた瞬間、

また深い息が漏れる。


「……はぁ」


結衣は横で静かに見守っていた。

そのため息の意味を、誰よりも理解しながら。


投稿ボタンを押すと、

結衣はそっと目を伏せた。


(葵さん……見てくれるといいな)


声には出さず、心の中だけで願った。

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