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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第64章

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軋んでいく

「朝ごはん、作っておいたよ」


俊介は優しい。

優しすぎるくらいに。


テーブルに並ぶ料理。

笑顔。

気遣い。

肩に触れる指先。


全部、以前と同じはずなのに。


葵の心は、

そのひとつひとつに軋む音を立てる。


俊介の手が触れた瞬間、

身体がわずかに強張った。


「……どうしたの?」


「ううん、なんでもないよ」


笑ってごまかす。

そうするしかない。


俊介を変えたのは自分だ。

俊介が壊れたら、それは自分のせい。


そう思い込んでいるから、

拒絶なんてできない。


でも——

触れられるのがつらい。


子どもの話をされるたび、

胸の奥がざわつく。


“この人と未来を作れない”


その感覚だけが、

静かに、確実に広がっていく。

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