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気持ちの変化
朝、目を開けた瞬間、
胸の奥がじんわり痛んだ。
俊介の腕の重さは、もうない。
でも、昨夜の“圧”だけが身体に残っている。
北海道で吸い込んだ、
あの軽い空気が恋しい。
雪の匂い。
結衣の笑い声。
居酒屋「灯」の温かい光。
大和の気配だけが残る店内。
全部、夢みたいに遠い。
「子ども……欲しいね」
俊介の声が、
頭の奥で何度も反響する。
以前は、
その言葉を“未来”だと思っていた。
今は——
“鎖”に聞こえる。
自分の心が変わってしまったことを、
葵はようやく自覚した。




