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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第63章

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執着

「荷物、俺が片付けるよ」


そう言いながら、

俊介は葵のスーツケースを勝手に開けた。


服を一枚ずつ取り出し、

指で布をなぞり、

鼻先に近づける。


「……寂しかったんだよ」


背後から抱きしめられた。

腕に力が入る。

逃げられないように。


「葵がいないと、俺……ダメなんだ」


耳元で囁く声は甘いのに、

その奥にあるものは甘くない。


葵は笑ってごまかした。

そうするしかなかった。


でも胸の奥では、

北海道で取り戻した“自分”が

静かに悲鳴を上げていた。


俊介の腕の中で、

葵は気づく。


――私は、また息ができなくなる。

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