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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第61章

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溢れる記憶の色

結衣の言葉を読んだ瞬間、

葵の中で何かがほどけた。


大和の記憶が、

一気に溢れ出す。


優しい声。

守ってくれた夜。

奥さんの乳ガンの話。

「この人を好きになっちゃいけない」と

自分に言い聞かせたあの頃。


インスタで見た動画。

つい押してしまった“いいね”。

すぐ消した後悔。


そして——

居酒屋「(あかり)」に1人で行ってしまった。


社員旅行で久しぶりに深呼吸できて、

気づいたら店の前に立っていた。


俊介といるときの息苦しさとは

まるで違う空気だった。


(……どうして、行ってしまったんだろう)


理由なんて分かってる。

でも、認めたくない。


結衣には書けない。

誰にも言えない。


葵は胸の奥で、

静かに疼く気持ちを抱え込んだ。

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