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後押し
葵は届いたDMを見つめた。
「どんな存在だったんですか?」
「ごめんなさい。無理に答えなくて大丈夫です」
(……結衣さん)
踏み込んできた。
でも、すぐに引いてくれた。
その“押して引く”温度差が、
胸の奥を強く揺らす。
(……言いたい。
でも、言ったら戻れなくなる)
スマホを握りしめたまま、
葵は深呼吸をひとつ。
明日には東京に戻る。
DMのやり取りができるのは、
“今だけ”。
この時間が終わったら、
また日常に戻る。
(……今しかないんだ)
胸の奥で、
静かに何かが動いた。
雪の降る北海道の夜。
葵の指先は、
そっと画面に触れようとしていた。




