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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第60章

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後押し

葵は届いたDMを見つめた。



「どんな存在だったんですか?」

「ごめんなさい。無理に答えなくて大丈夫です」



(……結衣さん)


踏み込んできた。

でも、すぐに引いてくれた。


その“押して引く”温度差が、

胸の奥を強く揺らす。


(……言いたい。

 でも、言ったら戻れなくなる)


スマホを握りしめたまま、

葵は深呼吸をひとつ。


明日には東京に戻る。

DMのやり取りができるのは、

“今だけ”。


この時間が終わったら、

また日常に戻る。


(……今しかないんだ)


胸の奥で、

静かに何かが動いた。


雪の降る北海道の夜。

葵の指先は、

そっと画面に触れようとしていた。

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