前へ目次 次へ 202/278 悩む夜 葵はホテルの窓辺で、 雪の降る街をぼんやり眺めていた。 結衣からのDMは、 まだ返せていない。 「何年前くらいですか? そのときの店長って、どんなでした?」 (……言えない) “店長”という言葉が胸の奥を強く揺らす。 返したいのに返せない。 返せないのに、気になって仕方ない。 そして—— 明日には東京に戻る。 (……この時間が終わったら、 もうDMなんてできないかもしれない) 社員旅行の“今だけ”が、 葵の胸を静かに締めつけていた。