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迷う夜②
ホテルの部屋。
葵はベッドに座り、
スマホの画面をぼんやり見つめていた。
結衣からの新しいDMが届いている。
「以前働いていたお店って、どこだったんですか?」
(……聞いてくれるんだ)
胸の奥が、
少しだけ温かくなる。
でも同時に、
言葉にするのが怖かった。
居酒屋「灯」
その名前を出した瞬間、
自分の気持ちがはっきりしてしまいそうで。
(……どうしよう)
返事を打とうとして、
指が止まる。
消して、
また打って、
また消す。
踏み込んだら戻れない。
でも、踏み込まないと前に進めない。
その狭間で、
葵の指先は震えていた。




