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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第58章

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蘇る横顔

「そういえばさ」

和田が湯飲みを拭きながら言った。


「昔ここで働いてた女の子、いたろ。

 えっと……誰だっけ。お前がよく気にかけてた子」


大和の指が、熱燗の器の縁で止まった。


「……及川さん、ですか」


「ああ、その子だ。

 真面目で、よく笑う子だったよな」


大和は答えず、

ポケットのスマホをそっと握った。


インスタのリールについた、

一瞬だけの「いいね」。


すぐに消えた。

名前も、確信も、何も残らなかった。


ただ、

“及川さん”という響きだけが

胸の奥に静かに沈んでいく。


——今、どこで何をしているんだろう。


もちろん、大和は知らない。

知るはずもない。


ただ、

今年はどうしても、この灯りの下に来たかった。


外では、雪がまた降り始めていた。

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