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15年ぶりの灯り
気づけば、大和は
居酒屋「灯」 の前に立っていた。
15年前、
自分が働いていた店。
暖簾が揺れ、
店内の灯りが外に漏れている。
「……なんでだろうな」
自分でも理由は分からない。
ただ、今年はどうしても、この灯りに触れたかった。
扉を開けると、
出汁の香りと湯気の温度がふわりと広がる。
「いらっしゃい……って、え? 大和さん?」
カウンターの奥から、店主の和田が目を丸くした。
「嘘だろ。何年ぶりだよ」
「……なんとなく、寄りたくなって」
自分でも説明できない気持ちを抱えたまま、
大和はカウンターに腰を下ろした。
熱燗が置かれ、
湯気がゆっくりと立ち上る。
「懐かしいな。ここ、変わってないですね」
「変わるわけないだろ。
お前が若い子に囲まれて働いてた頃と同じだよ」
その言葉に、
胸の奥でひとつの記憶がふっと揺れた。




